Monday, September 27, 2021

Amazon.「利他」とは何か (集英社新書)

Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: 「利他」とは何か (集英社新書)

「利他」とは何か (集英社新書)›カスタマーレビュー
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.1
星5つ中の4.1
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すべての肯定的なレビュー›
nacamici
ベスト1000レビュアー
5つ星のうち4.0利他は主義であり、無私は在り方である
2021年4月19日に日本でレビュー済み
東京工業大学の「未来の人類研究センター」の共同研究から生まれた一冊。美学者、政治学者、批評家、哲学者、小説家の5人が1本ずつエッセイを寄稿している。格差拡大、気候変動、コロナ危機などを背景に「利他」の考え方が注目を集めているので、この概念を多面的にとらえてみようということで分野が少しずつ違う5人が「利他」を自身の関心分野に引き寄せて論じたという恰好である。

利他を比較的直接論じているのは近年の動向を書いている美学者の伊藤亜紗と贈与に絡めて論じた政治学者の中島岳志の2人。なかでも伊藤亜紗の1本は情報量も多く現状のよい整理になった。合理的利他主義(ジャック・アタリ)、効果的利他主義(ピーター・シンガー)といった「理性」を前面に出した利他の考え方は、個人的な思い入れをベースにした「共感」では複雑に絡み合ったシステミックな問題に対処できないことの裏返しであるという説明はまったく腑に落ちる。また、寄付の8割が個人由来(日本は8割が法人)というアメリカでは「私財をどこに寄付すれば効率的に使われるか」を気にするという話も頷ける。

伊藤は利他的行為のインパクトを数値化することの負の面にも言及している。たとえば寄付の効率という場合、額だけでなくリターン(目的の達成度)が問われる。現にそのような目的で多様な指標がつくられているが、今後はその精度や存在意義も改めて問われることになっていくだろう。ビル・ゲイツの慈善活動も効率化、最適化を重視した取り組みだが、莫大な資金力を背景にした介入は、たとえ非常に効率がよかったとしても、発展途上国の国家制度を弱体化しかねないという根本的な問題もある。

数値化に関しては、罰金など数字による管理を導入すると倫理的・感情的なつながりが失われる傾向があり、報酬は利他的行動を短期的にしか促進しない(長期的にはむしろ意欲を失わせる)という研究結果もある。また、「数量化しえないものを数量化しようとする欲望の直接的な帰結」として「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」を増加するという指摘(デヴィッド・グレーバー)も紹介している。

伊藤ならではの視点だと思ったのが「『共感から利他が生まれる』という発想は『共感を得られないと助けてもらえない』というプレッシャーにつながる」という指摘。これは多くの利他の矢印の先にある人やコトにとっての現実だ。「ケア」の現場において伊藤はそういう場面を見ており、「他者のために何かよいことをしようとする思いが、しばしば、その他者をコントロールし、支配することにつながる」とも感じている。それが彼女の利他に対する警戒感に結びついているという。やってあげようとしすぎることも、過剰に「効果」を測定しようとすることも、利他的行為の受け取り手に対する信頼を欠いている。利他的行為の結果が想定通りでないとき、それを受け入れ、相手を変えるのではなく自分が変わることができるか。伊藤がたどり着いた結論は「『よき利他』には必ず『自分が変わること』が含まれている」「相手のために何かしているときであっても、自分で立てた計画に固執せず、常に相手が入り込めるような余白をもっていること」だった。

利他に絡む支配について、中島岳志は『小僧の神様』を引用して論じている。小僧に寿司を御馳走してやったAが人知れずいいことをしたにもかかわらず、人知れず悪いことをしたような「変に寂しい、いやな気持」になった。また、中島がインドで通りすがりの人に荷物を運んでもらったときに礼を言ったら、とてもいやな顔をされたという話も似た構造だ。そのインド人は当然のことをしただけなのに礼を言われることで借りをつくらされたような嫌な気持ちになったのだろう。「利他は私たちのなかにあるものではない、利他を所有することはできない、常に不確かな未来によって規定されるものである」というのが中島のとりあえずの結論だ。

中島は本書の「おわりに」で利他をめぐる各人の論考を通じて「うつわとしての人間」という共通の人間観にたどりついたと述べている。やや苦し紛れのようなまとめ方だが、つまり「器」は誰かによって使われることで機能を発揮するといった意味であろうか。私という主体が私でないものに対して一方的に与える、施す、働きかけることが本来の利他ではない、というところまでは最大公約数としていうことができそうだ。

しかし利他が「器としてのあり方」なのだとしたら、「利他」よりも「無私」といったほうがしっくりいく。伊藤のエッセイのなかにAltruismは19世紀半ばにオーギュスト・コントがEgoismに対置する言葉として19世紀に提唱するようになった造語であると書いてあった。それより起源の古いことばにcompassionがある。日本語では「思いやり」と訳されることも多いが、もともとはラテン語のcon(共に)とpati(苦しむ)が結びついた言葉で文字通り「ともに苦しむ」というニュアンスがある。言いたいのは、altruismがあくまでもismつまり主義・主張なのに対して、compassionは感情であり行動である。そういう流れでいっても、「器としての在り方」はaltruismよりcompassionに考え方として近いのではないか、そんなことを考えた。
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45人のお客様がこれが役に立ったと考えています
上位の批判的レビュー
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あお
5つ星のうち1.0ううーん・・・
2021年6月22日に日本でレビュー済み
正直、つまらなかった。。ごめんなさい。。
それぞれの研究者プロフィール、代表著作を見て、本屋でまずは実物を
ぱらぱらしてみてください。
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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日本から
nacamici
ベスト1000レビュアー
5つ星のうち4.0 利他は主義であり、無私は在り方である
2021年4月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
東京工業大学の「未来の人類研究センター」の共同研究から生まれた一冊。美学者、政治学者、批評家、哲学者、小説家の5人が1本ずつエッセイを寄稿している。格差拡大、気候変動、コロナ危機などを背景に「利他」の考え方が注目を集めているので、この概念を多面的にとらえてみようということで分野が少しずつ違う5人が「利他」を自身の関心分野に引き寄せて論じたという恰好である。

利他を比較的直接論じているのは近年の動向を書いている美学者の伊藤亜紗と贈与に絡めて論じた政治学者の中島岳志の2人。なかでも伊藤亜紗の1本は情報量も多く現状のよい整理になった。合理的利他主義(ジャック・アタリ)、効果的利他主義(ピーター・シンガー)といった「理性」を前面に出した利他の考え方は、個人的な思い入れをベースにした「共感」では複雑に絡み合ったシステミックな問題に対処できないことの裏返しであるという説明はまったく腑に落ちる。また、寄付の8割が個人由来(日本は8割が法人)というアメリカでは「私財をどこに寄付すれば効率的に使われるか」を気にするという話も頷ける。

伊藤は利他的行為のインパクトを数値化することの負の面にも言及している。たとえば寄付の効率という場合、額だけでなくリターン(目的の達成度)が問われる。現にそのような目的で多様な指標がつくられているが、今後はその精度や存在意義も改めて問われることになっていくだろう。ビル・ゲイツの慈善活動も効率化、最適化を重視した取り組みだが、莫大な資金力を背景にした介入は、たとえ非常に効率がよかったとしても、発展途上国の国家制度を弱体化しかねないという根本的な問題もある。

数値化に関しては、罰金など数字による管理を導入すると倫理的・感情的なつながりが失われる傾向があり、報酬は利他的行動を短期的にしか促進しない(長期的にはむしろ意欲を失わせる)という研究結果もある。また、「数量化しえないものを数量化しようとする欲望の直接的な帰結」として「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」を増加するという指摘(デヴィッド・グレーバー)も紹介している。

伊藤ならではの視点だと思ったのが「『共感から利他が生まれる』という発想は『共感を得られないと助けてもらえない』というプレッシャーにつながる」という指摘。これは多くの利他の矢印の先にある人やコトにとっての現実だ。「ケア」の現場において伊藤はそういう場面を見ており、「他者のために何かよいことをしようとする思いが、しばしば、その他者をコントロールし、支配することにつながる」とも感じている。それが彼女の利他に対する警戒感に結びついているという。やってあげようとしすぎることも、過剰に「効果」を測定しようとすることも、利他的行為の受け取り手に対する信頼を欠いている。利他的行為の結果が想定通りでないとき、それを受け入れ、相手を変えるのではなく自分が変わることができるか。伊藤がたどり着いた結論は「『よき利他』には必ず『自分が変わること』が含まれている」「相手のために何かしているときであっても、自分で立てた計画に固執せず、常に相手が入り込めるような余白をもっていること」だった。

利他に絡む支配について、中島岳志は『小僧の神様』を引用して論じている。小僧に寿司を御馳走してやったAが人知れずいいことをしたにもかかわらず、人知れず悪いことをしたような「変に寂しい、いやな気持」になった。また、中島がインドで通りすがりの人に荷物を運んでもらったときに礼を言ったら、とてもいやな顔をされたという話も似た構造だ。そのインド人は当然のことをしただけなのに礼を言われることで借りをつくらされたような嫌な気持ちになったのだろう。「利他は私たちのなかにあるものではない、利他を所有することはできない、常に不確かな未来によって規定されるものである」というのが中島のとりあえずの結論だ。

中島は本書の「おわりに」で利他をめぐる各人の論考を通じて「うつわとしての人間」という共通の人間観にたどりついたと述べている。やや苦し紛れのようなまとめ方だが、つまり「器」は誰かによって使われることで機能を発揮するといった意味であろうか。私という主体が私でないものに対して一方的に与える、施す、働きかけることが本来の利他ではない、というところまでは最大公約数としていうことができそうだ。

しかし利他が「器としてのあり方」なのだとしたら、「利他」よりも「無私」といったほうがしっくりいく。伊藤のエッセイのなかにAltruismは19世紀半ばにオーギュスト・コントがEgoismに対置する言葉として19世紀に提唱するようになった造語であると書いてあった。それより起源の古いことばにcompassionがある。日本語では「思いやり」と訳されることも多いが、もともとはラテン語のcon(共に)とpati(苦しむ)が結びついた言葉で文字通り「ともに苦しむ」というニュアンスがある。言いたいのは、altruismがあくまでもismつまり主義・主張なのに対して、compassionは感情であり行動である。そういう流れでいっても、「器としての在り方」はaltruismよりcompassionに考え方として近いのではないか、そんなことを考えた。
45人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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kotochan
5つ星のうち4.0 「うつわ」的利他とは、私たちがうつわのような存在になること
2021年3月19日に日本でレビュー済み
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最近注目されている「利他主義」の負の側面や危うさも含めて考えなおすことが重要、というのが本書のテーマである。全体的に読みやすく興味深い。5人の著者の論説のうち、印象に残ったところを紹介しておこう。「他者のために何か良い事をしようとする思いが、しばしば、その他者をコントロールし、支配することにつながること」、「利他の大原則は、『自分の行為の結果はコントロールできない』ということ」、「別の言い方をすれば『見返りは期待できない』」「利他とは、『聞くこと』を通じて、相手の隠れた可能性を引き出すことである、と同時に自分が変わること」(伊藤)、インドで親切な行為に「ありがとう」と言ったらキレられた。「間接的な因果による見返りを期待して行う行為は、常に利己的な利他になってしまう」(中島)、「自らの意を超えたところで動かされること、すなわち無為の状態においてこそ、利他は成就している」(若松)、「利他は、このサマリア人が感じた義の心をひとつのモデルにできる」「それは中動態においてとらえられる応答としての責任であり、帰責性からは区別される責任なのです」(國分)。このように並べてみた全体が、「うつわ」的利他のイメージである。それでは、どうしたら本当の「うつわ的利他」が意図せずに実現するのかとなると、哲学的、宗教的な、かなり深い領域にはいっていくようにも思う。最後の磯崎の話は、利他そのものについては、直接触れていないものの、小説家の作品が意図せずに小説の歴史に奉仕していることに、利他との関連を見ている。当レビューアーの好きな北杜夫の「谿間にて」も紹介されているし、保坂和志やその師匠の小島信夫の引用やらエピソードやらが色々出てきて面白い。「利他プロジェクト」、これからどのように続くのか、興味津々である。
29人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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POOH太郎
5つ星のうち5.0 メソッド利他
2021年4月15日に日本でレビュー済み
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利他とは何か。本著は東京工業大学の「未来の人類研究センター」における「利他プロジェクト」の可能性を考える五人の研究者による論考をコンパクトに紹介したものである。いうなれば、コロナ禍において世界が直面する今日の危機的状況を克服するキーワードとして注目される「利他」という思想的可能性をさぐる試みといえそうだ。
サンデル教授の白熱教室やアメリア・アレナスの鑑賞学ではないけれど、あえて異分野の論客による視点から「利他」を考えることで、たとえば「うつわになること」のようなイメージが成立してくるのがおもしろかった。
たとえば、「利己」の対立概念としての「利他」が因果を背景にしてメビウスの輪のようにつながっているとすれば「利他」は可能性として自己(意志)を超えた地平で生成される現象(効果)とみることができる。そういう意味ではこのプロジェクトの試み自体が利他的な可能性を孕んだものとしてたいへん興味深く思えてくる。
いうなれば、形而上学や身体論、表現論とも連動する現象学的なイメージもあるけれど、この「メソッド利他」にはコロナ禍に直面した現代社会のあり方のみならず人間という種のあり方を見つめなおす重要なヒントがあるようにも思えてくるから不思議だ。
サラリーマン川柳で「サラリーマン サラリーとったら ボランティア」というおもしろい作品を思いだしたのだがボランティア活動と利他行為はちがうのだろうか。ともに他者のためのおこないではあるけれど手段と目的という点で微妙にちがってくるのだろうか、などといろいろな仮説を立てて読む楽しさもありそうだ。

個人的には若松英輔の柳宗悦論がとてもおもしろかった。彼らの民藝運動そのものが利他的発想を内包し、美藝より工藝が優位に立つとするまなざしにも説得力があった。すなわち用のものとして機能して生成される無為の産物(利他の本質)にこそ美の可能性があるという民藝の発想はおどろきでさえある。つまり、人間の意志を超えた利他の文脈という意味では國分功一郎の中動態にこそ意志と責任に関する哲学的考察の中から可能性を考える作業がクロスしてくる気がしておもしろい。いうなれば、このプロジェクトの異分野の研究者による論考のダイナミズムにこそ「利他」の可能性があると云えるのかもしれない。
このほか、美学者の視点で伊藤亜紗、小説家の視点で磯崎憲一郎、政治学の視点で中島岳志といずれ劣らぬ論客による利他をめぐる重層的な考察がおもしろいのだが、磯崎氏の紹介する小島信夫の「馬」という作品には大いに魅力を感じた。これは直ちに読まなければという気にさせられた。磯崎憲一郎はこの作品について語る村上春樹の解釈を紹介しながら、ここでも作者の思惑(作為=設計図)を超えた出来事に注目している。
中島岳志はおわりに利他の本質を意図的な行為ではなく、人知を超えた「オートマティカルなもの」であり、利他が宿る構造として「うつわ」を想起させるあり方が大切としている。
おもえば、大沢真幸の「個体を超えた共存」や中島自身の個別な理性を超えた中に存在の英知を見出そうすること、つまりは集合的な存在に依拠しながら時代の変化に対応する形で斬進的に改革を進める保守の態度が重なるようでもある。

何はともあれ、いろいろなイメージが広がってくる本であることはまちがいない。まずはご一読を!
13人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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yurari
5つ星のうち5.0 「利他」は発生するもの
2021年3月21日に日本でレビュー済み
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東工大「未来の人類研究センター」のメンバーが、それぞれの研究分野や視点から「利他」にアプローチされていて、どれもとても興味深く、「利他」について思いを馳せるいい機会になりました。
本書にもあるように、それぞれの視点の中に「共通する何か」を私も感じ、それは(私的には)「利他は発生するものなのでは」ということでした。
「見返り」や「期待」を求めると、自分の利益へと誘導する「利己」になってしまう「危うさ」を、自分の反省とともに改めて感じさせられました。
そうではなく、「頭で考えるより先に行動してしまっている」ようなことが「利他」の本質な気がしました。
そして、そのためのもうひとつのキーが「行動」ではと思い至りました。
ふと思い出したのが、台湾の旅行時に道に迷って現地の方に尋ねた時のことです。その尋ねた方は、自分が急いでいたにも関わらず、わざわざそこまで連れていってくれました。
きっとその方は、別に見返りを求めたわけではなく、発生した利他心(?)のままに、とっさに「行動」してくれたのだと思います。
そのような状況的・発生的な「利他」を研究・追及するのは、論理的には難しそうですが、論理ではないその「視点」こそが、これからよりよく生きるいいヒントになることを、本書より実感しました。
研究のさらなる深まり(&続編)を楽しみにしております。
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大野
5つ星のうち4.0 利他とは「為す」のでなく「現れる」のだと
2021年4月1日に日本でレビュー済み
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利他的行為とは何か,という問題について多方面の論客が論じた書.総じて論じられているのは,利他を意図して為そうとすればそれは欺瞞に通じてしまう.意図しない利他行為の貴重さとその困難性ということか.
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ミスター・ディグ
5つ星のうち5.0 利他とは何か、5人の研究者が織り成すクインテット
2021年3月22日に日本でレビュー済み
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新型コロナウィルスの感染拡大によって、にわかに脚光を浴び始めた「利他」という言葉。本書はその「利他」という問題について、美学者・政治学者・批評家・哲学者・小説家といった肩書きを持つ5人の研究者が、それぞれの独自の視点から論じたものである。利他と言うと、我々は単純に相手の為になる事をすれば良いと考えがちだが、本書によると、それでは善意の押し付け、または見返りを求める「利己」的行為になってしまうという。「利他」とは、人間の考えを超えたオートマティカルなものでなければならないと。利他とはかくも奥深いものであったのか、という事が分かる好著。
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mt
ベスト1000レビュアー
5つ星のうち5.0 利他は可能か。思い出すのはスーパーボランティアの尾畠春夫さん。
2021年5月30日に日本でレビュー済み
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利他ということがまず存在するのだろうか。それは、仏教の忘己利他、あるいは自利利他という概念としてのみ存在するのではないだろうか。そんな無私の、自己犠牲の、見返りを求めない、相手をコントロールしない気持ちが存在できるのかと思っている。
本書では、生物として生きていくための手段として存在するのであれば、それは生き物全体のネットワークシステムのネットワークそのものではないかということが書かれている。
しかし、ドーキンスのいう利己的な遺伝子がまさに自分だけが生き延びるための「手段」としての利他であれば、施してやった、という気持ちが1ミリでもない、見返りを求めない「奉仕」でもいいのではないのか。利他に特別の精神性の求めすぎていいのだろうか。
儒教の「義」を持ち出してもいるが、惻隠の情を彷彿とさせる。関連して、親と子の間に「ありがとう」は不要であるという意見もある。しかし、自分は最近親子間でも言っている気がするが、これは何かの劣化なのだろうかと考えた。ありがとうの安売りなのか、、、。
最後に思い出したのは、スーパーボランティアの尾畠春夫さんである。彼は、死んだあと、冥土で母親にほめられたいという一心から無償の活動をしているという報道があった。「母親に背骨が折れるほど抱きしめられたい。」もし、利他は自ずと発生するものではなく、神より託されたものでもなく、背後に利己的な動機があったとしても、広く共感を得られるとすればこれはその一つではないだろうか。
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なんちゃって、お遍路くん
ベスト100レビュアーVINEメンバー
5つ星のうち5.0 やむにやまれずに、オートマティックに、表れ出てしまうもの...
2021年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私という"もの"をとおして、やむにやまれずに、オートマティックに、表れ出てしまうもの
としての他者を利する行為...これが、「利他」でしょうか。
 社会福祉や看護、介護などの対人援助の分野でも、"中動態"の考え方が出てきます。
 "第4章_中動態から考える_責任と帰責性"(國分巧一郎氏)には、神的因果性である"それまでの
経緯からそのように動いてしまった"というところを認めるからこそ、その結果としての行為として
の問題行動をひとつの現象として見つめることができる"というところは、カウンセリングの場面を
とおしても実感できるものです。
 カウンセラーとしての見方や姿勢を整理することができました。
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あお
5つ星のうち1.0 ううーん・・・
2021年6月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
正直、つまらなかった。。ごめんなさい。。
それぞれの研究者プロフィール、代表著作を見て、本屋でまずは実物を
ぱらぱらしてみてください。
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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我駕香
5つ星のうち5.0 思わずしてしまう
2021年5月2日に日本でレビュー済み
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自然と身体が反応して思わずしてしまうという経験が、実は利他的ではないかという示唆に共感しました。
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